院長ブログ blog

メディカルトピックス

細菌性腟症―気になる臭い

「キミ、変な臭いがするよ」—これほど、女性のプライドを傷つける言葉はないでしょう。

最近、このような悩みを抱えた若い女性が増えています。女性のデリケ-トな部分の臭いは、家族や友人にも相談できない深刻な悩みです。このような訴えを持つ患者さんのほとんどは、細菌性膣症(BV)です。しかし、半数以上が無症状なので気がつかないでいる人も多いようです。

今年の日本産婦人科学会で、驚くべきデ-タ-が発表されました。一般の妊婦の約30%が、細菌性腟症と診断されたのです。つまり、若い女性の実に三割が、この病気にかかっているということです。

正常の腟内はデーデルライン桿菌という善玉の乳酸菌が優勢の状態になっており、悪玉菌はおとなしくしています。乳酸菌は膣内のグリコーゲンを分解し、腟の中を強い酸性(pH3.5)の状態に保ち、悪玉菌が増えるのを抑える働きをしています。しかし、この大切な乳酸菌が減少してしまうと、悪玉菌が増えて、腸の中に生息している色々な菌なども腟内に入り込み、増殖するようになります。そして、オリモノが増え、魚の腐ったような嫌な臭いがするようになってきます。これが、細菌性腟症といわれるものなのです。

なぜ、このような病気が増えてしまったのでしょうか。

免疫を低下させる不規則な生活習慣も原因とおもわれますが、10代の女性などでは、頻繁にパ-トナ-を変えることも大きな原因と思われます。医学的には、必ずしも性感染症とはいえず、性行為に関連した感染症と言われています。しかし、性感染症にかかる危険が、非常に高いので、「性感染症予備軍」と言っても良いでしょう。実際に細菌を調べてみると、善玉菌である乳酸菌がゼロという女性も結構多く、これでは、HIV・エイズをはじめ、深刻な性感染症がますます増えそうな気がします。

標準治療では、クラミジア、トリコモナス、淋菌、カンジダなどの特殊な病原体が原因ではないことを確認し、適切な抗生物質を使います。妊婦に「細菌性腟症」があると「絨毛膜羊膜炎」が起こり、子宮の入り口が開いて早産になるといわれています。これを予防するために、妊娠前はもちろん、妊娠14週までに抗生物質の治療をする必要があります。しかし、抗生物質は「善玉菌」にもダメージを与えます。そこで私は、活性炭水溶液で腟内洗浄をして、乳酸菌生成物質であるアルベックスSU6というサプリメントを挿入する治療をお勧めしています。

(富永国比古:第115回日本産婦人科学会東北地方部会抄録、統合医療展2005、記念セミナ-)